釜石市の橋は

じっくり、震災・津波襲来後三週間たった釜石の市内をたまりん号でまわります。被災状況が判るよう、町名もつけておきます。
一緒に付いてきてください。市内のだいたいの現況が、分かると思いますので。

まずは、この写真。釜石街道、釜石駅のわずか手前。なにごともありません。　津波など無かったかのようです。
わずかに、歩道手前の角に積もる泥が、異変を予告しているようです。

釜石駅前。緊急車両が停まっている以外は、ごく普通の景色ですが、

その先に目を向けると、、、、

分かるでしょうか？　この、

丸の中のひっくり返った車・左上のまくれ上がった看板・手前の堆積した泥。　津波の影はすでにここにも。

そして、大渡橋南交差点を左折、釜石線の下をくぐり、橋を渡った瞬間、

状況は一変します。

大渡町の商店街。

たわんだシャッター、歩道を埋め尽くす瓦礫。店の中を見れば、水になんどもさらわれて、何もありません。

ただの空き地かと見れば、

どこから押し流されてきたのか、家の屋根が。

大町　パチンコ国際会館。ひしゃげた看板だけが残っています。

その隣の駐車場には、あの日から曝されたままの車が、今もなお。

同じく、大町。ガソリンスタンドも、看板を残し瓦礫に。

只越町交差点付近。　ここも元有った建物ではなく、どこからか来た瓦礫の山。

只越町を市役所に向かい北上。

同じく、只越町。　いったい、どんな力で叩きつけられたのでしょう。

このあと、若干の上り坂になる。とたんに周りの建物に被害は見られません。
さらに、津波襲来時の避難場所と指定された石段を登れば、

貪欲な水の舌先も届かない、生き延びられる平和な空間があります。

参道の奥にある宝樹寺は、避難に加え一時、遺体安置所としても使われたお寺で、今は役目を終え静まりかえっています。

坂道をもっと上り、バイパスに出ます。このバイパスは、震災一週間前に開通したばかりとか。
まさに、津波後の唯一の交通路。その目的のために作られたようで、不思議な気がします。

バイパスを港に向かえば、

一見、被害の無いようにも見える、釜石製鐵所の建物。　でも、右に回り込んでいくに従い、

むしり取られたように破壊され、彼方にはテレビにも再三映し出されていた、あの

陸に上がったタンカーの姿が。

もう一つ奥の埠頭。　並ぶテントの左には、

本来、輸出される車が何百台と並んでいるはず。それも、みな一瞬にして流されました。新車もすべて鉄屑です。

これほど大きな物が持ち上げられ、座礁しているとは。。。

遥か沖には、1200億の費用と30年の歳月をかけて造られた、湾口防波堤の無惨な姿も。

しかし、他の街に比べて、かろうじて釜石の商店街が原形をとどめているのは、この防波堤のおかげ、という話もあります。
木っ端微塵になっても、防波堤は多少の役目は果たしたと言えるかも知れません。それでも、被害は甚大ですが。

ユーチューブでもさんざん流れた、この建物。

うしろにある陸中海岸グランドホテルは、一見、無事に厄災を乗り切ったかに見えます。


グランドホテル、裏側。　波が建物の中を翻弄したのが、はっきり見て取れます。　中はおそらくメチャメチャでしょう。

さらに、一軒置いてとなり。　小さい青い屋根のように見えるのは、ひっくり返った船です。

トヨタレンタリース岩手。　地面に撒かれている白い粉は、消毒用の石灰。　はたしてこれで、どのくらい効果があるのか。。。

橋を渡り、押切商店。　奥に見えるのは、南リアス線の鉄橋。

その反対側、河口すぐのガソリンスタンド。　くちゃくちゃに積まれた、車の残骸。

松原交差点手前左、パーラークエスト。

その、車両進入禁止道路のどん詰まりのある、警察署。　港の際に建っていたため二階まで浸水し、使用不能です。



警察署は堅牢だったから、まだいいでしょう。道を挟んで反対側にあったはずの郵便局は、跡形もありません。

津波想定区域の看板が、空しい。

信号もなく、もしくは点灯しないため、主要道路は合流もままならず大渋滞に。

松原交差点右折。山際には車・船・家の残骸がごちゃまぜ。



南リアス線高架下通過、福田商店あたり。

松原町５丁目。　川沿いの住宅街。　の瓦礫。



廃水処理場の手前の・・・・・　なんだろう、これ。　白樺に車が串刺しになったみたいな。

そして、渋滞にまきこまれつつ、一時間以上もかけてタンカーの見えるバイパスから戻ってきた、釜石駅前。

ここには、灯りがあります。　泥も瓦礫も車や家の残骸も、ない。汚泥もない。　平和な青い灯りが夜に浮かんでいます。

あの橋を渡った向こうと、こちら。
誰が引いた線なのか、あまりに違うふたつの釜石。

振り返れば、街の中心部は闇の中。

捜索なのか片づけなのか、その日やるべきことを終えどこかに帰っていく車列の、闇の中にともるライトが、唯一の光源です。
車の流れが絶えたとき、街は闇と静寂に包み込まれるのでしょう。　ひとの生活の気配がない、静かすぎる夜に。